先輩社員の紹介

HOSHINO (U.S.A.) INC.

PRESIDENT

1994年入社 (文学部卒)

■ 現在の仕事について教えてください。

はじめに、星野楽器グループにおけるアメリカでのビジネスの状況を簡単に説明させてください。我々がアメリカでの本格的なビジネスをスタートさせたのは何と1960年代まで遡ります。この半世紀以上に亘る取り組みが、現在の「Ibanez」「TAMA」ブランドを築いた大きな礎の一つとなっています。企業名とブランド名が異なっていることや、当初から海外がビジネスの主戦場だったこともあって、日本で生まれ育った方は中々リアルに感じられないと思いますが、アメリカでのギターやドラムといった楽器業界では、「Hoshino」「Ibanez」「TAMA」という名前は誰もが知る「日本を代表する存在」 として長年認めていただいています。今日においても、我々が行っている事業領域に関して、皆さんが所謂楽器業界の大手として名前を知っている、どの日本企業よりも高い市場シェアを獲得しているものが非常に多く、更に、欧米の錚々たる有力楽器企業を抑えてトップシェアをキープしている分野も少なからずあります。知らなかったでしょ?

さて、私の仕事の話に移りますが、アメリカ東海岸に位置するPhiladelphiaの郊外に本社のある、Hoshino (U.S.A.) Inc.でPresident(社長)をしています。「Ibanez」「TAMA」両ブランドにおけるアメリカでのビジネス全てを統括し、また同時に100名近くの従業員を抱える企業としての現地法人そのものの経営を行っています。具体的な仕事内容を書き始めると何ページにも亘ってしまいますので割愛しますが、毎日途轍もなくやることがあります。

Hoshino (U.S.A.) Inc.で働くことは、現地法人として果たすべき責務を全うすることはもちろん、アメリカのことだけではなくグループ全体に関わる様々な方針を自ら考え推進していく、重要なポジションで仕事をすることです。ですから、残念ながら皆さんが入社されてすぐに務まるようなものではありません。私のケースではアメリカに来る前に、星野楽器(株)および星野楽器販売(株)を経験しており、それぞれが今の仕事をする上での大きなバックグラウンドになっています。特に、入社後すぐに配属された星野楽器販売(株)東京営業所での楽器販売店へのセールス業務が私のビジネスパーソンとしての足腰をしっかり鍛えてくれました。それでも一般的に見れば、社員に対して驚くべき早い段階で大きなチャンス(別名:チャレンジ、苦難)を与えることのできる会社だと思っています(ただし待っていれば誰にでも平等に来るもの、ではないのでご注意を)。そのような、大きくない組織であるが故の醍醐味がこの会社では“more than思う存分”に味わえます。

もう一つ、私は現在アメリカで生活をしており、こちらに赴任してから既に10年以上が経ちます。海外駐在というと、一般的には、“世界とダイレクトに繋がっているグローバルな会社”というイメージになるのだと思いますが、私から見れば、星野楽器グループは遥か昔からずっとそうであり、全く珍しくない「日常」なので、改めて「私たちはグローバル企業だ」 と声高に言うことには、正直抵抗があります。日本の本社オフィスでも、石を投げる必要すら無く簡単に海外駐在経験者に会えますし、海外出張に至っては行ったことのない社員を探す方が大変です(部署にもよりますが)。このような社風は、“音楽と楽器に国境は無い”という私たちのビジネスの本質が影響しています。グローバルであることは、星野楽器グループのアピールポイントなどではなく、「日常」の一つの側面に過ぎないのです。

そうは言っても、きっと皆さんが興味を持つであろう「海外で働く場合に必要なこととは?」に関して、英語論とかじゃなくて私自身が大事に思うポイントだけ挙げてみます。

「自社のビジネスが提供している“具体的価値”ヘの深い関心と理解」
「高度な母国語(日本語)力とコミュニケーションにおけるコアコンテンツ重視姿勢」
「コトバに直接表れない“モノ”を感じ取る嗅覚、想像力」

当たり前過ぎて拍子抜けしましたか?私はこういったことを“如何なる相手、場所、精神、肉体状況”下でもできることが重要だと常々考えています。星野楽器グループで海外に関わる仕事を希望する方は、何故そうしたいのかを様々な角度から自問することをお勧めします。何故なら、海外と言っても当社の取引国の数はきっと皆さんの想像を遥かに超えるでしょうし、様々な職種やカタチでの関わり方があります。また、私の様な海外駐在の仕事というのは「コトバ」の問題以上の難しさが待ち構えており、単に「海外と関わりたい」という理由(というか、これ自体は仕事選びの理由には全くならないと私は考えています)だけでは、求められる役割を十分に果たすことは難しいと思います。今、世界はグローバリズムへの失望と極端なローカリズムへの躊躇の狭間で、経済的にも文化的にも音楽的にも大きく揺れ動いており、ビジネスのあり方も厳しく問われ、より深い次元で世界とコミュニケートすることが求められています。それに応えられる人材をと考えると、それはもはや語学の問題などでは全くなく「総合的なチカラ」ということになってくるかと思います。(チカラって何だ?という声が聞こえてきそうですが、それは皆さんへの宿題、ということで。)

■ 星野楽器を選んだ理由を教えてください。

どうせハードに仕事をするなら、好きなことのための方が気合の入り方が違うでしょ?
皆さんの中には、これまで主に趣味としてきた音楽や楽器を「仕事」とすることに不安や戸惑い、躊躇があるかもしれません。それらはひょっとしたら、仕事そのものが「楽しくないモノ」という前提があるのかもしれません。しかしながら私にとっては、より真剣であればあるほど仕事も趣味も全く同じように「楽しいことと苦しいことの繰り返し」です。音楽や楽器という分野において、その楽しさと苦しさの振り幅をより大きく感じたいと思うのであれば、それを仕事とすることが皆さんにとって自然な選択になるのではないか、と思います。

また、私は「大きくない企業」である星野楽器グループを敢えて選びました。皆さんが仕事選び、企業選びをする際に、売上高や従業員数などといった「規模」をどうしても考慮してしまうのはある意味仕方のないことではあるのですが、たとえ何万人もの従業員を抱えている大企業であっても、実際に仕事をするときには、より細分化された小さな部署やチームといった単位が全ての基本になります。個人のビジネス人生の実際において、大きな規模というものは就職活動をしているとき以外で意識されることはないと感じます。大きいことが安全安心であった時代は、皆さんの親世代に近い私から見ても、遥か昔に崩壊した過去の歴史です。ですから、「規模」を優先順位の上位にして仕事や企業を捉えてしまうと、その瞬間から本質的なことが見えなくなってしまいます。是非「中身」を見るようにしてください。そして、星野楽器グループの中身はかなりsolidです。

■ 就職活動をしている学生の方へのメッセージをお願いします。

私たちのビジネスは「文化的」であるが故に、社員の脳の中身も柔軟でかつ多方向へのバランスが取れていることが求められます。いくら理論上正しいと思われることでも、文化的に受け容れられないことには、最終的にビジネスとしては成功しません。逆もまた然りです。また、会社は他人(私の場合、他人種)の集合体です。自分の考えが人に伝わり、他人の考えを自分が知ることなしには本当に何も始まりません。これには自分の持てる限りの想像力を駆使し続ける必要があります。楽器ビジネスは本質的に、Human Businessなのです。

昨今の不透明な経済状況の中で、何を軸に仕事選び、会社選びをしたら良いのかが見えにくい、本当に難しい時代だと思います。でも、だからこそ「今日の流行」 に流されずに自分自身で真摯に考えることができるじゃないですか!いろいろ書きましたが、残念ながら普通の就職活動では、会社のことはホンの一部しかわからないと思いますし、なかなか正確な情報に辿り着けないことも多々あるでしょう。入社してみてから初めてわかることだらけです。でもそれって当たり前でしょ?ですから、自分が仕事をする上で一番外したくないポイントとその理由をはっきり決めて、そのことだけは答えられる人が見つかるまで、しつこくしつこく確認してください。それをしなければ、私たちと一緒に働くことになるならないに関わらず必ず後悔する、と思います。頑張ってください!

ミニアンケート

■ 学生時代にがんばったことは?

あまりにも昔の話なので……バイト、バンド、ヴィンテージギターの収集、そしてお酒かな?

■ 星野楽器に入って「これは苦労した……」と思うことは?

使う言語に関わらず、「人とのコミュニケーション」。そして、それは今でも終わらない道程。

■ 星野楽器に入って「よかったな」と思うことは?

個人では決して辿り着くことのできない、人やモノとの出会い、国や場所との出会い、そこで行われている「コト」や「背景」との出会い。アメリカ国内や日米間はもちろんのこと、ヨーロッパやアジアへの出張も含めて、大体一年に合計で地球3~4周分くらいの距離を移動します。

■ 星野楽器をひとことで言うと?

The company working for “wisdom of musicians”

■ お休みの日は何をして過ごしますか?

社長業にあまり休みはありませんが、家族、家族、家族。とにかく時間があれば全て家族のために。

■ 好きな音楽は?

こういう答えられない質問は本当に困ります。私の立場で、音楽の好き嫌いを言えるわけないでしょ!でも言ってしまうと、癒しのために聞く音楽は、Slack-keyやその他あらゆるスタイルのFinger picking guitar musicです。また妻がピアニストなので、ほぼ強制的にClassicを聞かされているうちに、徐々に……。

■ 今後の目標を教えてください。

名実ともに世界No.1のギター会社およびドラム会社になること。私たちは業界でもトップレベルのハードワーカーの集まりだと自負していますので、至って真面目に到達可能だと思っていますし、そのゴールは現時点でもそれほど遠くありません。私自身が座右の銘としているコトバの一つに、“The world meets nobody halfway.”というものがあります。この言葉どおり、実現に向け進んでいきたいと思います。

■ オフの一枚

主に移動のフライトか就寝前が中心ですが、読書が趣味です。以前は年間100冊くらい読んでいましたが、最近は時間が無く、買うペースは変わらないのに読むペースがガクッと落ちてしまい、読めていない本がこんなに溜まっています。新しい本をまた買ってしまう前に、何とかしなければ。